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新事業計画 ~小山畳店の次世代プロジェクト~

令和時代のニーズである半畳サイズ、縁無し畳、薄床畳の普及を国産天然畳表で目指す

『洋間にい草の香りを』

2021年3月31日 小山畳店は、令和2年度第5次モノづくり補助金制度に採択されました。

これまで、畳の表替えは、重量のある一畳藁の畳床にい草で織られた畳表を貼り、縁をつける手法が主流でしたが、現在は縁なし畳、半畳サイズ畳、薄床畳を求めるニーズも多いです。しかも、それらに用いられる畳表は、多くが中国産であったり、ポリウレタンや樹脂製の人工畳であったりします。

そこで、薄いウレタン製の畳床を扱え、かつ様々なサイズにも対応できる新方式の畳織機を導入しようと考えています。それに、純国産天然畳表の材料を用いて、国産志向の強いお客様に満足度の高い製品をお届けしていく所存です。

新事業開始により、幅広い生産性を確保すると共に、畳表のみならず、革新的な商品の開発も併せて行いながら、質の高い国産畳表の普及に努めていきたいと思っております。

新規事業の具体的な取り組み

①会社の来歴(創業年、経営者の変遷、創業からこれまでの経緯)

小山畳店は、昭和25年初代小山重次によって創業し、2代目小山秀男、そして1990年に3代目の小山秀晴(現店主)が引き継ぎ、現在に至っています。これまで、畳表を始め、襖・障子・網戸の張り替えを主たる事業として、さいたま市桜区に店舗を構え、一般家庭の顧客を中心に30年間経営しております。

主な事業である畳の張り替えの機械は、先代からのものを使用していましたが、故障したために2016年10月に新しい機械を購入しております。

ただし、残念ながら、この機械では、半畳サイズや30mm以下の薄い畳床を縫製できません。

また、薄畳対応の縁付け機械を2019年12月に追加購入しています。

事業方針の大転換

中国産を国産と偽って販売する畳業界の原材料表示の曖昧さを正すべく、2020年に一大決心をして、生産者表示のある「国産畳専門店」に事業転換をしました。加えて、これまで請け負っていた業者の委託や襖・障子・網戸の張り替えを一切取りやめ、中国産の畳を仕入れから一切外し、純国産の畳表の新調・張替えのみに業務を絞り込みをしました。

そんなおり、当店も2020年初頭から新型コロナウィルスの影響を受け、受注数減になりました。2020年の1月~5月までの5か月間では、7件の受注しかありませんでした。

しかし、ありがたいことに経済的な不況下でも、9月以降は10件以上の受注数を確保できるようになってきました。これは、お客様の中に、国産天然畳への愛着があるからだと思っております。

ただし、残念なことに、2020年受注総数93件のうち約22件は、現在の機械では対応できない縁なし半畳畳と畳床15mm以下の薄畳でしたので、お断りせざるを得ませんでした。これが、新機械導入の必要性を浮き彫りにしてくれました。

国産い草農家を守ること

特に、国産い草の大きなシェアを占める熊本県の生産農家は、本年度の熊本大地震による災害や、コロナウィルス蔓延による経済不況により、大きな打撃を受けています。

下の右グラフは、平成元年以降の国産い草農家推移です。

新型コロナウィルスが蔓延し始めた2020年3月頃から当店のサプライヤーである多くのい草農家さんたちも、政府からの補助等を受けつつ、経営を続けているのが現状です。

写真は、令和元年に熊本県八代地方のい草農家さんたちを訪問したときのものです。作業の様子を一部始終見学し、農家さんたちと語り合い、彼らの熱意や努力を聞く中で、国産ブランドのい草の素晴らしさに触れることができます。

近年、市場には、塩化ビニルやポリプロピレンで作られた人工畳が広く流通しています。

実際に、市場に流通する縁無し半畳たたみは、80%以上がこの人工畳です。

カラフルな畳もあり、若い世代を中心に人気がありますが、日本のい草農家たちはこんな風潮を大変残念に思っています。

私自身も、実験として、10年前に1枚だけ人工畳を設置しておりますが、確かに見栄えは良いし、剥けないし、色落ちもしません。

しかし、見た目は畳でも、それは畳とは異なるものです。

なぜなら、人工の畳には、い草の香りをはじめ、吸湿性も抗菌性もないからなんです。

しかも、ポリプロピレンは焼却処分時に、大気に有害なガスを撒き散らす上に、高温処理が必要なために地球温暖化の要因にもなります。

一方、天然の畳表は、そのまま土に戻り、肥沃な土壌になるので100%エコです。

私は、地球市民として、これからの人類は、少しでも地球に優しい天然素材を選ぶ時代ではないかと考えています。

こうしたことからも、私も、い草農家さんたちと同様、「丈夫で色が落ちなくて人工表でも畳は畳、それで満足。」と言う日本人が増えることを危惧しているわけです。

下の写真は、一般に普及している中国産の畳表と国宝金閣寺の和室にも使用されている国産ブランド畳表(吉田一哉氏作)です。

国産畳が、いかに厳選された優良ない草を使用して織り込まれているかがよくお分かりいただけるものと思います。

もちろん、当店が取り扱うのは、私自分の目で見極めたお客様に自信をもってお勧めできる優良な国産品だけです。

「日本のい草農家」がなくなることは、「日本のたたみ文化」の喪失を意味します。

現在の畳業界には、価格競争だけが先行し、「お客様にとって本当に良い畳は何か。」という一番大切な視点が欠けています。

このような経緯から、私は「お客様に本当に良い製品をお届けしたい」「質の高い国産天然い草の畳をもっと普及させたい」「国産い草農家を守りたい」との3つの信念を強めております。

半畳サイズの天然畳表の製作によって、より多くの国産畳表を普及させることができますし、それが、年々減少し続ける国産農家を守ることに直結するものと思っております。

新規事業の課題

半畳たたみと質の高い国産畳表の融合には、生産上の課題と技術的な課題の両面を克服する必要があります。

◎生産上の課題

現在使用している機械では、構造上、従来規格の畳の床厚30㎜以上で、かつ1畳サイズしか縫い付けができません。

そのため、半畳畳や縁無し畳の注文を、昨年度は20件以上もお断りしてきている現状です。したがって、新事業の開始には、まずをもって半畳サイズや縁無し畳にも対応し、かつ薄い畳床をも加工できる新しい縫い付け機械が必要です。

また、現在の機械では、写真のようにほぼ手作業での補助を行う必要があるため、かなりの時間と労力を要しています。

新機械の導入により、作業時間の短縮化・作業の効率化を図ることもできます。

下の写真18の機械が、導入を予定している機械です。規格外の半畳サイズを始めいかなるサイズも15㎜厚以下の畳床も扱えるのでオーダーメイドの受注にも対応できます。

切断装置の上げ下げが電動化されていて、表張り時にはエアー式で抑えるので、これまで手作業で行ってきた労力や時間を省き、作業効率も大幅に向上します。

概算では、一畳を1枚製作するのにかかる時間は、4分の3程度になると見込めます。

本機械の導入で、これまで対応できなかった半畳や薄い畳の施工が可能になり、多くの受注を短時間でこなすことが可能になり、生産性の大幅な向上が見込めるものと思っています。

◎技術的な課題

半畳サイズの畳表は、一枚の表面積が小さいゆえに「目積」という通常よりも細かに織った原材料が使用されます。

これは、現在、国内では熊本県の限られた農家しか製作されておらず、生産農家での作業工程も多いために、原価もやや高めです。

この目積に曲げを加えることを可能にする機械が上のスリムベンダーです。

縁なし畳の製作には、畳を直角に折り曲げる技術(永続的な折り目の保持)がどうしても必要です。

国産天然畳表は、肥沃な土壌で育った草を使用しているために、中国産に比べて厚みがあからなんです。

これに曲げを加えるためには、熱の加減や加熱の時間など、職人としての特別な技術や経験が必要とされます。

具体的には、折り曲げる場所の見極め、一枚を曲げるために要する時間、設定温度、などが挙げられます。

当然、使用する各畳表によって違いもあります。なぜなら、化学製品の人工畳とは違って、天然い草の畳表は生き物だからです。

私は、先代から、畳を敷きつめるときには名刺が差し込まれないようにしなさいと教わってきました。

2020年初旬には、国産の天然畳(目積と言われる特別なもの)を加工するための研修を受ける予定で、これまでの経験に加えて、天然畳の加工技術をさらに向上させていく所存でおります。

写真では伝わりにくいことですが、人工畳は、デザイン性に優れていますが、い草の「香り」も「効能」も一切ありません。

当店が目指すのは、この美しいデザイン性に、国産天然い草の「香り」と「効能」を付加した畳表製品としてお客様にお届けすることです。

そうすることで、現代感覚にマッチした国産畳をお客様に提供しながら、年々減少し続ける国産い草農家を守ることにもなると確信するからです。

課題解決のビジョン

ビジョンの実現には、以下の3つを連結していくことが必要だと思っています。

◎国産畳ブランド力向上のための取り組み1

国産い草の畳表の魅力は、何といっても質の高さと天然い草の持つ効能にあると思っております。

い草は、独特の香りを放ち、吸湿作用や抗菌作用があり、健康にも良いものです。

価格の安い中国産に比べて、若干値段は高くなりますが、日本古来から利用されている本物のい草の良さを理解しているお客様は多いと思っています。

当初、国産畳表専門店として事業を行うことに、多少の不安はありました。

なぜなら、安いものが売れるという市場原理に逆行することだからでした。

しかし、単に販売する側がきちんとその価値を実感し、お客様に伝えていないだけではないだろうかと考え、そこで、実際に自分の部屋に各種国産畳を敷き詰め、それぞれの畳表についての色合いや肌ざわりなどの経年変化を確かめています。

例えば、良い畳表ほど、時間の経過とともに均一な美しい黄金色に焼けていきます。

使い込むほど味が出るというのでしょうか。

このように、国産ブランド畳の良さを自らが確信を持ち、お客様に伝えるための根拠性を高めることも重要だと考えている次第です。

◎国産畳ブランド力向上のための取り組み2

商品ブランド力を向上させるために、人々の畳への概念を覆すような生活空間への生かし方も考えています。

下は、数あるアイディアの中の一例ですが、左から、置きたたみ、フローリング上に敷く畳ラグ、玄関たたみです。

その他、キッチンやトイレなどにも対応する製品の開発も手掛けていきたいと思っています。

「天然い草が香る暮らし」「健康にいい暮らし」をキャッチフレーズにしながら、幅広い年代のご家庭にご利用いただき、国産い草を暮らしの中に取り込んでいただくことが国産畳のブランド力の向上にもつながっていくと思っています。

◎お客様へのアピール

当店は、主にホームページとグーグル広告が中心です。特に、WEBコンサルティングに依頼して製作したホームページ公開後の6月からの受注が大幅に増えていることから、ホームページは皆さんに天然畳のすばらしさを伝えるためのもってこいのツールではないでしょうか。

国産畳専門店の当ホームページがお客様に受け入れられていることは、日本人が祖国を愛し、本物の国産を好んでいることを物語っているように思います。どんなに安い中国産の畳表やポリウレタン製の疑似畳が市場に流通していようとも、心から良いものを求める人々の姿が消え去ることはないものと思います。

当店が、生産者表示のある国産畳専門の看板を掲げ、他店との差別化を図ることが、お客様に大きな安心と信頼を与えているとしたら、大変ありがたいことです。

そのために、国産の天然い草の良さを発信し続け、それにお答えする製品をお届けすれば、国産畳のブランド力をより高め、国産農家を守ることにもつながると思っています。